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日本の妖怪伝説

妖怪とは

妖怪といえば怖いもの、正体がよくわからないものという印象ですが、一方で、コロナ禍で人気となった「アマビエ」やテレビアニメで人気になった「妖怪ウォッチ」など親しみやすいキャラクターとして描かれることもあります。
妖怪が人々にとって怖い存在でなくてはならなかった昔とは違って、今では観光やエンターテインメントに利用されることも多くなっています。

アマビエ
アマビエの像(熊本県・藍のあまくさ村)

そもそも妖怪とは何を意味するのでしょうか?
改訂新版 世界大百科事典によると、人知の及ばない異常な事物や現象、恒常的に祭祀されていない、人々に恐怖感を与え、さらには災厄をもたらすこともある霊的存在もしくは怪異現象の総称、とあります。
その代表的なものに、想像上の鬼・河童・天狗があり、日本三大妖怪といわれています。

三大妖怪

河童

川や池にすみ、泳いでいる人の足をつかんで水中に引きずり込み、溺れさせる妖怪です。その姿は背中には亀のような甲羅、手足の指には水かきがあり、体の色は緑色をしています。

鬼は人間に危害を加える想像上の怪物で、描かれる姿としては角や牙を持ち、人と似た姿をしています。

天狗

山伏姿で深山に住んでいます。顔が赤く鼻高で、神通力を備え、翼があって自由自在に飛び回ることができます。人間が住む土地とそれ以外の境界に現れ、人間を境界の外に連れ出す役割を持っています。

これらの妖怪は、それぞれ川や池や山など危険な場所に足を踏み入れないように警告したり、注意を促したりする役目があったと考えられます。

日本独特の妖怪文化

現代において、世界に誇る日本文化といって挙げられるのは、アニメ・コミックやゲームなどですが、その中には多くの妖怪的な存在が登場します。特に有名なのは「ゲゲゲの鬼太郎」「となりのトトロ」、最近では「鬼滅の刃」「妖怪ウォッチ」などの作品があります。
人々はこのような作品を通じて、幼いころから妖怪を馴染みのある存在として認識してきました。怖いけれどもっと知りたいという欲求も芽生え、それに応じて全国各地の博物館や美術館では、妖怪に関する展示会が開催されています。
そのように恐怖の存在であるはずの妖怪すらユーモラスなキャラクターに変えて、怖がりながらも楽しむというのが、日本独特の文化といえるでしょう。

日本最初の妖怪

伝説として日本最古の妖怪と伝えられている場所はいくつかありますが、書物として残っている中では奈良時代の歴史書「古事記」や「日本書紀」に登場する妖怪が初めとされています。
その中で、 ヤマタノオロチ(大蛇の妖怪)やなどが登場し、人を食う怖い存在、あるいは神が堕落して恐ろしい姿に変化したものとして描かれています。

大蛇退治
比婆荒神神楽による大蛇退治

それら日本神話は神楽でも演じられ、現代においても伝統文化として日本各地で行われる里神楽で見ることができます。
国の重要無形文化財である備中神楽では神様である建御名方命を鬼の姿で表現し、その荒々しさを表現しています。

備中神楽のお面
鬼の顔で表現される備中神楽の建御名方命

日本の妖怪スポット

日本の観光ついでに妖怪スポットもめぐってみたいという方は、妖怪スポットのリストを紹介しているサイトがありますので、ご参考まで。

全国47都道府県の【妖怪観光スポット】を一覧表にしてみました!
https://kaidan-navi.com/yokai_in_47prefs/

【妖怪好きは地方へ行こう!】日本の妖怪スポット10選!
https://kaidan-navi.com/best10_yokai_sightseeings/

日本の怪遺産

怪遺産は、2007年に妖怪をテーマに執筆活動をする国内の漫画家や小説家らがつくった世界妖怪協会と、妖怪季刊誌「怪」(角川書店)が設けた制度です。妖怪文化の普及に貢献した、自然、文化、地域などを対象に認定されます。
全国各地で妖怪伝説がある中で、現在まで認定されているのは、

鳥取県堺港市(2007年認定)
徳島県三好市山城町(2008年認定)
岩手県遠野市(2010年認定)

のたった3か所です。
伝説の根拠が明確でないことや妖怪関連のゆかりが薄いなどの地域もあるので、歴史ある妖怪の地を訪れたい人には目安になるでしょう。

徳島県三好市山城町

子泣き爺発祥の地とされる三好市の「大歩危・小歩危」はインバウンドの観光客が多く訪れている人気の観光地です。
大歩危・小歩危という名前は、大股で歩いても危険、小股で歩いても危険という意味があるとされ、それほど険しい秘境にあります。
厳しい自然の暮らしの中で、人々が危険な場所に近づかないように、事故や事件、自然災害から身を守る知恵として、妖怪伝説が語り継がれてきたという歴史があります。

道の駅大歩危・妖怪屋敷
道の駅大歩危の正面入り口
道の駅大歩危・妖怪屋敷
道の駅大歩危・妖怪屋敷の入口

妖怪屋敷と石の博物館

妖怪街道に並ぶ妖怪のオブジェたち

妖怪街道からほど近く、藤川谷沿いには妖怪街道があり、大きな妖怪の像をあちらこちらで見ることができます。

ドロメキ淵のエンコ
ドロメキ淵のエンコの木像
野鹿池の龍神
野鹿池山(のかのいけやま)の龍神の木像
児啼爺の石像
児啼爺(こなきじじい)の石像

くわしい情報は・・・
四国の秘境山城大歩危妖怪村

鳥取県堺港市

堺港市は鳥取県の西部にあり、日本海側の重要港湾として栄えてきました。境港水産物直売センター、境港さかなセンターなどで豊富な海産物を購入できるので、観光客に人気のスポットとなっています。
妖怪といえば漫画「ゲゲゲの鬼太郎」ですが、その作家の水木しげるさんの出身地が境港市であることから、「ゲゲゲの鬼太郎」をテーマにした町おこしが行われ、駅前から伸びる商店街が「水木しげるロード」と呼ばれるものに発展しました。

水木しげるロード

ねずみ男のブロンズ像
水木しげるロード/ねずみ男のブロンズ像
こなきじじい
水木しげるロード/こなきじじいのブロンズ像

水木しげるロードにある妖怪ブロンズ像の一覧はこちら・・・
MIZUKI SHIGERU ROADhttps://mizuki.sakaiminato.net/road/

ねこ娘の公共桝ふた
水木しげるロード/ねこ娘の公共桝ふた

ブロンズ像だけでなく、足元の桝ふたにも注目。さまざまな妖怪がカラフルに描かれています。

水木しげるロードのマンホールふた、公共桝ふたについてくわしくは・・・
https://www.city.sakaiminato.lg.jp/index.php?view=106710(境港市ホームページ)

客寄せする鬼太郎
水木しげるロード/客寄せする鬼太郎

河童の泉

妖怪広場内にある妖怪版トレビの泉で、鬼太郎やねずみ男など計9体の妖怪たちのくつろぐ姿が見られます。

河童の泉
河童の泉


2つの妖怪観光地を紹介しましたが、妖怪が誕生した背景、歴史を感じたいなら徳島県三好市山城町や岩手県遠野市、妖怪をアトラクションとして楽しみたいなら鳥取県堺港市という感じでしょうか。
堺港市から近い松江市には「怪談」の著者として知られる小泉八雲記念館もあります。怪談を通して妖怪文化を伝承してきた人物なので、寄ってみるのもおすすめです。

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